リストラは「悪」なのか?

 リストラは悪い言葉の印象が強いのではないだろうか。首を切られて仕事を失うということや,業績が悪い企業がすることがリストラという印象を抱かないだろうか。

 リストラの本来の意味は「企業の組織や事業構造を再構築・整理することを指している」必ずしも人員削減や業績悪化とは結びつかない。

 

 ここで日立製作所のリストラの例を取り上げる。「グループ企業の株式を売却し,グループを去ってもらうのは,心情的には辛いことでした。グループ会社に転籍した先輩も大勢います。どの会社も業績自体は悪くありませんでしたから「なぜ,東原は業績のいい会社を売ったりするのか」と反対するささやきも聞こえてきました。

 逆なのです。業績が良いからこそ,今のうちに売るのです。サービス提供事業への重心移動を加速していった日立グループに残ったままだったら,必要な当為や戦略の実行ができず5年後には業績が落ちていったかもしません」(東原敏昭(2023)『日立の壁』,p.183)


 つまり,日立製作所の戦略と合わなくった事業を分離するという方針でリストラを行っている。日立で当該事業が活動を続けていても資源配分の優先順位が下がるため,日立グループにいても成長が見込めなくなる。日立グループに残るととそれだけ競争力が低下していってしまう。
 そこで,収益性が高く競争力が高いうちに他のグループへ事業を売却するのである。魅力のある事業のため価値も高い。移転先が売却事業とのシナジーが強ければ資源配分も受けることができる。

 

 このように,リストラは単なる人員削減ではなく,企業の持続的な発展や戦略実現のための前向きな再構築と捉えることもできる。経営戦略とリストラの関係性を正しく理解することで、「リストラ=悪」という固定観念を乗り越える視点が見えてくる。