企業とはなにか

企業について考えてみたいと思います。考えるにあたって経営学と経済学の著書を抜き出します。

 (経済体としての)企業とは技術的変換という仕事を行い,それによって付加価値という成果を生み出す存在(伊丹・加護野,2003, p.3)。

 企業外部から自社が必要なインプットを購入する。購入したインプットに技術的変換を加える。その結果として生み出される製品やサービスを市場で売却する。

 企業とは顧客の創造を行うためにマーケティングイノベーションを担う機関である(ドラッカー, 2006訳, pp.46-47を基にまとめる)。

 市場は,神や自然や経済によって創造されるのではなく,企業によって創造される。企業の行為が人の欲求を有効需要に変えたとき,はじめて顧客が生まれ市場が生まれる。顧客が欲求を感じていない場合もある。その場合も企業が顧客の欲求を生み出したとき,顧客が創造される。

 企業とは,生産要素を生産物に変換する組織である(コース,1992訳,p.8)。

 

 企業(business enterprise)とは,事業を企てることであって,起業家(entrepreneur)は激変する社会の必要とする新しい製品やサービスの可能性を見抜き,自己の危険負担のもとで,人,物および金を結合してそれらを創り出し,社会に提供し利益を獲得して,利害関係者に配分する。

 

以上の定義を旅館を例に考えます。

 必要なインプットや生産要素:人材,食材,固定資産,消耗品などでしょうか。

 技術的変換:お客が快適と感じ,宿泊の満足を感じられるあらゆるサービスを提供するというアウトプットや生産物を想定します。そのためにインプットとして購入した人材はお出迎え(車庫入れ,荷物運び),受付(チェックイン),インフォメーションセンター,清掃員(客室内,客室外,温泉,レストラン),コック,ウェイターなどを担い顧客にサービスを行います。食材はコックが調理しておいしい料理を提供します。

 

 なお,経営学では「現実の企業を理解することが目的」であるために,(企業について)最初から結論を先に置くような定義は設けないという主張もあります(井原, 2008, p.17)。

 

Coase, R. H.(1992)『企業・市場・法』東洋経済新報社

Drucker, P. E. (2006)『現代の経営(上)』ダイヤモンド社

伊丹敬之・加護野忠男(2003)『ゼミナール経営学入門 第3版』日本経済新聞出版社

井原久光(2008)『テキスト経営学第3版』ミネルヴァ書房