東日本建設業保証株式会社と前払金保証

 建設業保証株式会社(東日本,西日本,北海道の3社がある)は,国や公共団体が発注した工事の受注者に支払われる前払金に関する保証を行う企業である。前払金保証の制度を確認したのちに,東日本建設業保証株式会社(以下東日本建設業保証)の有価証券報告書を読んでいく。

 

 最初に前払金保証とは何かを東日本建設業保証のHPで確認する。

 

 「前払金保とは、公共工事の発注者が前金払をした場合において、受注した建設企業が倒産等により工事を続行できないため、発注者が工事の契約を解除したときに、発注者が支出した前払金が損失とならないよう保証する制度です。」

前払金保証のしくみ | 前払金保証 | 東日本建設業保証株式会社

 

 国や公共団体などは,発注した工事の円滑,適正な施工を支援するために工事の受注者に対して(通常は4割の)前払金を支払う。

 

 前払金を受け取った受注者は下請企業への代金支払いや材料の支払いなどに充てる。工事完了時に一括して代金を受ける場合と比較して,受注者の資金繰りが楽になる。資金の都合がつかなくなり,工事が進められなくなるリスクを回避できる。

 

 前払金の財源は税金である。万が一工事を進めることができなくなり,かつ前払金の回収が滞ることは問題である。貴重な公的資金を守るためにも前払金の保証を行う制度が求められる

 

 そこで,「公共事業の前払金保証事業に関する法律」が制定された。同法律の第一条を引用する。

 

 「第一条 この法律は、公共工事に関する前金払の適正且つ円滑な実施を確保するため、前払金保証事業の登録及びその事業の運営の準則を定めることにより、前払金保証事業の健全な発達を図り、もつて公共工事の適正な施工に寄与することを目的とする。」

 

 同法律に基づいて事業を行う保証会社が,冒頭に述べた東日本建設業保証株式会社,西日本建設業保証株式会社,北海道建設業保証株式会社の3社である。

 

 東日本建設業保証のHPに基づいて,前払金保証事業を確認する。

 

 最初に発注者である国・地方公共団体と受注者である建設企業が公共工事請負契約の締結を行う。次に建設企業と建設業保証株式会社が前払金保証契約を結ぶ。最後に保証証書を発注者に引き渡すことで,前払金の支払いを受ける。

 

 仮に建設企業が工事の続行が不可能になると,発注者から保証金の支払請求(建設企業に支払った前払金のこと)を受ける建設業保証株式会社は保証金を発注者に支払ったのちに,建設企業に対して求償を求めていく

前払金保証のしくみ | 前払金保証 | 東日本建設業保証株式会社

 

 以上を踏まえて,東日本建設業保証の第72期有価証券報告書(令和5年4月から令和6年3月)を見ていく。

 

 前払金の保証を行う対価として受け取る収入保証料が120億円,責任準備金戻入が55億円など,累計の営業収益(売上高)が178億円である。当期純利益は35億円である。営業収益当期純利益率は19.6%となっている

 

 資産合計は2,590億円であり,うち投資有価証券2,031億円が大部分を占める。利益剰余金が2,075億円と,ほぼ同額なので,利益の積立割合の投資有価証券を購入していることが示唆される。

 

 保証債務残高は1,086,364百万円である。うち当期の弁済額が423百万円である。保証債務残高に対して弁済額が少ないのは,そもそも国・公共団体の入札要件に当てはまるような建設企業は,信用力も高いため,ほとんど倒産がないのだと考えられる。

 

 実際令和5年度の前払金保証件数が121,681件に対して,弁済を行った件数は19件にすぎない。

 

 建設業保証株式会社も国内に3社しかないので寡占業界である。保証事業は低リスク・高安定収益モデルであることがわかる。

 

参考

第72期有価証券報告書

https://www.ejcs.co.jp/ejcsv1/wp-content/uploads/2024/06/annual-report_72.pdf