持ち合い株式の会計処理

 株式持ち合いは株式会社同士がお互いの株式を相互に持ち合うことを意味する。持ち合い株は会計上,「その他有価証券」に分類され,連結貸借対照表には「投資有価証券」として計上される。

 

 その他有価証券の時価が取得原価よりも上がっていた場合,時価増加分を純資産の部の「その他の包括利益累計額」に計上される(税金の影響は無視する)。

 

 ここで重要なポイントは,時価の上昇分を連結損益計算書に計上せずに,純資産に直接計上するという点である。

 

 連結損益計算書には実現した収益や実現する可能性が極めて高い収益が計上される。例えば売買目的で保有する有価証券の時価が上昇した場合,たとえ未売却であっても換金可能性が高いため,その増加分は連結損益計算書に計上される。

 

 そして,純利益は連結損益計算書から導かれ,利益剰余金として株主資本に組み込まれる(非支配株主がいない場合)。期中に配当や増資などの資本取引がなければ,純利益の増加分と株主資本の増加分は一致する。これをクリーンサープラスとよぶ。クリーンサープラスは会計上重要な概念である。

 

 もしもクリーンサープラスがない場合,純利益が過少または過大に計上されている可能性があるため,財務諸表の信頼性に疑問が生じる。クリーンサープラス関係が成立していれば,財務諸表間のつながりが適切であると判断しやすくなる。

 

 純利益は配当の原資になるので,換金性が高いことが望まれる

 

 上記を踏まえて「その他有価証券」の性質を確認しよう。

 

 その他有価証券は,両社の経営の安定を図るため,相互持合いで保有している。このような株式は売却をするうえで事業上の制約があるため,すぐに換金を行うことができない。そのため,連結損益計算書時価の増加分を計上しない。

 

 一方で,その他有価証券の時価上昇は,資産価値が増加したことを意味する。資産価値を適切に表示するために連結貸借対照表時価でその他有価証券が計上される。株主資本の利益剰余金には連結損益計算書を経由する必要があるので,「その他の包括利益累計額」に表示される。

 

 以上のように,「その他有価証券」は時価で評価されつつも,その評価差額が連結損益計算書ではなく純資産に直接計上される。これは,換金性や実現可能性といった観点から合理的な処理である。企業の財務諸表を正しく理解するためには,こうした包括利益の仕組みやクリーンサープラスの意義を把握しておくことが重要である。